Switchback (2022)

Switchback (2022) 95min

出演:バット・アルハム 内海 紗花 向山 チエミ 網岡 諒真 廣瀬 菜都美 市川 智也 入江 崇史

監督・脚本・編集:岩田 隼之介
プロデューサー:辻 卓馬

撮影:山川 智輝 
照明:髙井 友太 加藤 佑太
録音:夏原 拓朗 岡添 圭一
助監督:櫻木 千春 撮影助手:中島 悠
制作助手:山田 磨由子 神戸 克哉
ヘアメイク:福永 リナ 藤井 タカヒロ 
音楽:久保 華恵
デザイナー:竹田 隆憲
コーディネーター:山田 将大 北井 康弘

制作:フューチャーシネマプロジェクト、株式会社 フォーカルノート


<物語>

現代。愛知県大府市。 ここは、名古屋市の南に位置する静かな街。 ある日、東京からソーシャルブランディングプランナーの岸谷が大府市のプロモーションをするためにやってきた。大府市の中学生、アルハム、スズカ、チエミ、英一郎をはじめ、市内の子どもたちが、そのプロモーション映像をつくるために招集された。 岸谷のやることに何か違和感を感じつつも、非日常的な出来事に興味を惹かれる子ども達。 街を巡り、映像を撮影していく中で、車椅子に乗った謎の男、三石と出会う。 ドローンを操る三石は、彼らに昔話を始めた。 それは、大府市にあったとされる飛行場の話。 そこを飛んでいた飛行機の話。 戦争の時の話。あまり語られなかった昔の話。 そんな発見をきっかけに自分たちの街のことをもっと知ろうと動き出す。 そして夏休みも終わりに近づいた頃、英一郎は目を疑う光景を目にする。 本当に些細なすれ違いで、子どもたちはバラバラになり、それぞれの道をもがきながら歩き始める。 ー あいつのことは信じない ー わたしのことなんてわかるわけない 大人を信じたい気持ち、信じてはいけない予感。 夏から冬にかけて、大府市内をさまよい、歩き、走る子どもたち。 大人の正しさとは。子どもの気持ちとは。何が正しいのか。 その答えは、どこを巡ってもわからない。 しかし、掴めそうで掴めないなりにも「それでいい」と思える答えにきっと巡り合える。

おおぶ映画祭 2021

大阪アジアン映画祭 インディ・フォーラム部門 2022

London International Filmmakers Festival 2023

THE NORTH FILM FESTIVAL 2023
concept 〜 パンフレットより抜粋 〜

あの時の自分も、いまの自分もほんとだよ」映画の終盤、アルハムに向かって電話ごしに語る田岡の言葉だ。

「否定したい過去の自分」は誰しも苦い記憶とともに持っているであろう、それが14歳なら尚更だ、自分をとりまく人々や出来事の繋がりが途端にリアリティをもって見えてきて妙に怖くなるのが14歳のような気がする、「世界がひっくり返ると安心しない?」と岸谷が語るように、自分をとりまく世界がひっくり返ることを密かに期待しているのが14歳かもしれない、なんとか繋がりを保とうと、もしくは世界をひっくり返そうと、いつもの自分より背伸びをして馴染みない言葉を使ったり、同級生が知らないカルチャーに手を出したり、時には浅はかな理由で誰かを傷つけたりするのが14歳だ。 14歳を思い出すと赤面してしまう、自分を保つ為に自分を変えようと必死でカッコワルイからである、なるべく否定したい、でもあの時の自分も、いまの自分もほんとなのである、それは逃れようのない事実だ。

大府市という実在の街を舞台にした「スイッチバック」は様々な背景を抱えながら街で暮らす人々と、人々の生活を支えてきた土地がもつ歴史にカメラを向けた映画である。

大府市にはおよそ 3 , 0 0 0 人ほどの外国籍の人が暮らしている、その中には両親は外国籍だが大府市で生まれた子どももいる、アルハムやチエミがそうだ、またはある災害をきっかけに大府市に移住してきた設定の人物を演じるスズカや、祖父母の代から大府市に住んでいる英一郎もいる、それぞれ固有の背景を抱える男女の関係性の変化やそれぞれの選択の多様性を丁寧に描こうとこころみた。

大府市の土地に関してはゆるやかな丘陵が続くその地形を利用して坂の上からボールが転がすというプリミティブな映像から、ある地点から急に平坦になるその違和感をきっかけに太平洋戦争時に作られた大府飛行場の跡地との遭遇を描くことで土地がもつ見えにくい歴史と現代の中学生との接続をこころみた、また現在の大府市の風景や街並みが区画整理によって変貌していく過程もおよそ 6 ヶ月の撮影期間を費やした結果で記録する事ができたはずである。

外国人、被災者、戦争、などスポットライトが照らされにくい事柄を意識的に探し積極的にカメラを向けたのは、いまの大府市のある側面を記録することが自分の役割であると考えたからである、見えにくくなっている街のあの時の姿やこれからの姿を撮ろうとしたのだ。

ただ大府市内だけの閉じた物語になるのは避けたい、そこで地方と中央を繋ぐ存在として岸谷というメディアを扱う人物を配し世界観のスケールを拡げた、他にもここで書き切れないさまざまな要素を盛り込んで見応えのある映画になったと思う。

あった事がなかった事にされそうな日本で、あの時と自分は確かに繋がっていることを映画のなかにおさめようと不器用にジグザグ行ったり来たりしながらこの映画は完成しました、楽しんでいただけたら幸いです。

監督 岩田 隼之介


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